テキスト編集者も知っておくと役に立つ(かもしれない)画像加工のおはなし

この記事はアドベントカレンダー「編集とライティングにまつわるアレコレ」15日目のエントリです。今日の東京は寒いですね。愛機MacBook Proパームレストが凶器のごとく冷たいです。

編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017 - Adventar

尊敬する先輩編集者のid:mohriさんがアドベントカレンダーを立てたのを知り、何か書けるかなぁとモジモジしているあいだに全日執筆者が決定してしまうも、2日間抑えていた当のモーリさんに1日分譲ってもらい、そうそうたる面々の末席を汚すことになりました。

簡単な経歴としては、ITバブル期に技術系出版社に入社し書籍(たまにムック)編集者として就業してたところ、金髪ジャーナリストさんに目をつけられかけてもらい新興音楽媒体に編集者兼記者として転身。月間PVが30万ぐらいから800万ぐらいになる時期を当初はデスク、のちに副編集長として過ごしました。その後フリーランスの編集者になるも、なぜかメインの仕事は某レコード会社でA&R、という始末。でも生業は編集者だと自称しています。

書き方を変えると、仕事の足場が紙(農耕民族)→Web(狩猟民族)→紙&Webという変遷を経ています。Webを狩猟民族にカテゴライズするのはニュースメディアにいたからですね。記者会見対応やライブレポート執筆は、いかに早く正確にターゲットを捉えるかという点で、狩りに近い。

他の執筆者の皆さんはたぶんテキスト編集について書かれると思うので、わたしは趣を変え、狩猟民族時代から蓄積してきた画像編集の小技を記します。テキスト編集者も知っておくと役立つと思いますよ!

1)カラープロファイルと仲良くしよう

皆さんCMYKが印刷用でRGBが画面用なのはご存知かと思います。

でも玉石混合のWeb媒体では、ときどき色が転んでいる画像を見かけます。たとえばこんな感じに。

わかりづらいのでもう1枚。

(下の画像はAdobe Stockからです)

これら2枚の画像は、CMYKモードのデータをそのままWebに掲載しているため、ブラウザが解釈できず妙な発色になってしまっているのです。一番わかりやすい=転びやすいのが緑で、やけに蛍光っぽい色味の画像を見たら要注意です。紙用の校了データをWebに転載する場合起こりがちなミスでもあります。それぞれ正しい画像は以下のとおり。

次は女性の肌に注目してみてください。

これは正解の画像も並べてみましょう。

(こちらもAdobe Stockから:背景の青もだいぶ転んでいたなぁ)上の画像はAdobe RGB、下の画像はsRGBカラープロファイルを埋め込んであるのです。そして多くのブラウザはAdobe RGBを解釈できません(Safariだけできたような気がしたのですが今チェックしてみたらダメでした)。Adobe RGBのほうが扱える色空間が広いので、特にプロのカメラマンはAdobe RGBを好んで使いますが、Webに掲載する際には必ずsRGBに変換しましょう。

これは多くのWeb媒体が忘れてしまいがちな作業で、美しく撮影したアーティスト写真がくすんだ肌色になっているのをよく見かけては悲しい気持ちになっています(そもそも素材を提供するレコード会社やプロダクションがしっかり管理すべきなのですが)。

撮影した写真でも制作したベクター画像でも、公開する(入稿する、納品する)際にはカラープロファイルの埋め込みを忘れないのが肝です。自分が表現したい色を他人に伝えるたったひとつの手段なので。

2)トーンカーブとクイックマスクでなんとかなる

記者から上がってきた写真がどうもピントを捉えていない画作りの場合、さくっと編集してしまいましょう。

師走の新宿を収めた写真です。しかしどうも寝ぼけていて何を言いたいのかいまいち説得力がない。撮ったのはわたしですが。

そこで画面下方の人物エリアのみクイックマスクをかけ、ほんの少し明るくしてから、全体にトーンカーブレイヤを乗せて黒を締め光を膨らませました。せわしない感じを目指した編集です。

そして人物写真も色を締めるだけでずいぶん印象が変わります。

こちらベン・カーソン。選択に意味はありません。色の悪いCCライセンスの記者会見写真を探していたらこうなりました。

どの辺りが悪いかというと、やはり暗い。そして黄色味がかっています。音楽媒体在籍時にいろいろな記者会見にひとりで行って写真撮影と記事執筆をこなした経験から言えるのは、ほとんどの会見場の光は黄色いんです。色温度でいうと3000K〜4000Kぐらい。映像や写真収録スタジオで会見を行う場合、ばっちり照明を当ててくれるためマシなことが多いのですが、ほかの媒体が飛ばすフラッシュの色に引きずられて黄色く写ることもしばしばでした。

なのでとりあえず撮って、あとからLightroomPhotoshopで整える方式で挑んでいました。

で、上記のベン・カーソンの写真は、わたしだったらこう編集します。

まずは寒色のレンズフィルターを弱めにかけ、全体トーンカーブで明るく。さらにクイックマスクで青い壁紙エリアを選択してもう一度トーンカーブをかけて白い幕部分をくっきり白く出しています。アメリカ大統領選に出馬せんとする人物の写真なのだから、明るくパキッとしているほうが記事の意図に合うでしょう。シャツの右ポケットが飛んでしまっているのが気になる場合は、ここだけマスクをかけてトーンカーブを落とすのも手です。

3)パス、パッチ、ゆがみは使えると便利

ここからは、デザイナーかレタッチャーがいる大きな媒体所属の編集者では不要な作業かと思います。しかしながらいざ!というときに自分で作業できると便利ですよ。他の媒体では撮れないような素晴らしいカットが撮れたのにデザイナー / レタッチャーが捕まらないギャー!なんて事態も起こるでしょうし。

たとえばめっちゃいい角度なのに目が半開きとか(ここではお猫様で代用)。

そんな場合は不自然にならない程度に目を開けてもらいましょう。

たとえばインタビューが終わった後に写っちゃいけないもの(競合他社のロゴとか、クライアントのものではないドリンクとか)が画面にあるのに気づいたりとか。

インタビュアーにもインタビューイにも「もう一度撮らせてください」とはなかなか言いづらいでしょうから(そしてミスには場がお開きになった後に気づくものです)消してしまいましょう。写り込みや影も忘れずに。

(あんまり丁寧じゃないですがサンプルとしてご笑納ください)

まとめ

全部の作業はAdobe Photoshopで行いました。個人で保有している方は仲間ですね!持っていない方でも会社員編集者であれば事務所の共有マシンにインストールされているでしょうから、業務の合間に触ってみるといいのでは。

ここで行った作業は、原稿整理だとわたしは考えています。表現したい完成物のために、素材を整えることが原稿整理だとするならば、画像もそれに倣っていいだろうと。用字用語を整えるのや漢字のトジヒラキを統一するのと同じレベルの作業。そのため、あんまり時間をかけずにささっと行える程度の編集を心がけています。

最後に、わたしがよく使うAdobe製品一覧です。フォトショ、イラレ、IDは編集者皆さんにお馴染みだと思います。そのほか左から写真現像用のLightroom、動画編集用のPremiere、CG制作用のAfter Effects、動画色味調整用のSpeedgrade(先日Premiereへの統合が発表されました)、mp4やmovをプレイヤー再生可能なメディアに落とすEncore、サウンド編集用のAuditionです。インタビューの音声が聞き取りづらいときAuditionでコンプかけたりリミッターかけたりノイズとったりすると便利ですよ。

そしてマシンはMacBook Pro Retina Displayモデルを使っています。細かいニュアンスの色味を確認するのにこれ以上最適なモニタはないと思っています。商用印刷物の入稿時にカラーキャリブレーションしなくてもカラープロファイルさえしっかり整えていれば狙いどおりの色校が出るのも重宝しているポイントです。あとMacだとわざわざPhotoshopで確認せずともOSレベルで画像の状態(カラープロファイルとかExifとか)がわかるのが地味に便利です。

AdobeAppleの回し者みたいになってきたのでこのへんで。皆さんよい編集ライフを!明日はmtakanoさんのエントリです。

<2017年12月15日20:52追記>

はてブid:yamo74さんからご指摘受けたので。

テキスト編集者も知っておくと役に立つ(かもしれない)画像加工のおはなし - editorialtips

デフォルトのFirefoxを除いてPCブラウザでプロファイル反映しないものはありません。勘違いしてる。あとAdobe Stockはライセンス取得してから掲載しようよ

2017/12/15 20:00

b.hatena.ne.jp

マジですか?手元の環境(ブラウザ4枚、iOS 1機種)では明らかにAdobeRGBとsRGBで違う結果が出力されてますが……。

こちらのブログでもカラーマネジメントシステムはあるもののsRGBしか適用されないとありました。

Chrome, Firefox, Safari で調べたところ、

CSS の色空間は sRGB のはずだけど… | tech - 氾濫原

各ブラウザ開発元のヘルプやフォーラムでICCプロファイルをサポートしているかどうかも検索しましたがどうも見つけられず。よければリンクをお知らせください。

そしてライセンスの件は勘違いしていました。Adobe CC常駐ツールに「10点まで無料」って書いてあったからライセンス認証スキップしてましたよ。

バタバタしているので画像の差し替えは後日になりますが遅ればせながらちゃんと認証しました!